断熱等級、性能は日本全国の地域ごとに決められており、基準となる地域は大きく8地域に分かれています。
おおまかにいうと1、2地域が北海道の指定地域、8地域が沖縄などとなっています。
愛知県はざっくりと6地域が大半を占めます。(山間部では4、5有)
北上、高所程断熱性能は厳しく、したがって北海道や山間地域の方が断熱基準が厳しくなります。
私が設計を始めたころは断熱の基準などありませんでしたが、この10年程度で法制化され、COP21の協定で2020年以降の温室効果 ガス排出削減などのための新たな国際枠組みとして「パリ協定」を採択、その関係で建物の断熱性能も義務化が叫ばれ、2021年の4月から住宅も義務化となる予定です。

一般住宅(300㎡未満)は建築士から建築主への説明義務が必要となりますが省エネ基準適合は努力義務となっており、気候風土適応住宅(土壁や板壁構法の家)は外皮基準が適用除外、かつ一次エネ基準が緩和されます。
法施行時に確認申請に断熱計算書が必要となるかはよくわかりませんが、国交省の建築環境企画室が作成のレジュメによると半分程度の工務店、建築士は断熱計算(1次エネルギー&外皮性能)が出来ないとの報告があるため、仮に検査機関で適合判定がされないようであれば、計算せずにクライアントへ断熱性能の適合を報告することも考えられます。
なので確認申請には計算書が必要と思いますが、どっちにしても当事務所は数年前からソフトで計算しているので対策は万全です。詳しく書くときりないのでこの辺でこの話はやめますが、ますます我々建築士の仕事は複雑多種な作業が増えて大変です・・・・。
もっとも着工件数の9割以上はハウスメーカーの住宅の為、我々のような建築士の建物は景気減退と人口減により今後さらに減っていくと考えられます。
話を基に戻します。
断熱性能は地域ごとに定められており、今回の設計の建物地域はUA値(外皮平均熱間流率)が0.87です。難しい言葉ですが、簡単にいうと値が小さいほど断熱性能は上がります。北海道は0.46です。
ただし、
はっきり言ってそれでは不十分と思います。
新築住宅の住宅性能検査で様々な竣工検査(あるいは断熱が出来ている中間検査)に立ち会っていますが、正直、ぎりぎり省エネ法数値の案件は「暑く」そして「寒い」です。
私が立ち会うのは空調がかかっていない状態での検査ですから、なおさら敏感に感じます。
これらの感覚は当日の気候、体調などにも影響され、また個人的な主観にも左右されますが、かなりの数を検査してきた身としての実践的哲学からの意見です。
省エネ法の数値では不十分という意見は、専門的に住宅建築を扱っている人々には共通認識といってもよいかと思います。
何故ならば多くの有名ハウスメーカーはUA値 0.6内外で設計されているからです。
おそらくZEH基準値を指標にしていると考えられます。
(*ZEH基準(太陽光発電設置+発電エネルギー=消費エネルギー を目指す基準のこと)は0.6 以下です。)
さて
今回設計の住宅は、北海道の基準程度となっています。断熱材の厚みや性能はそれ程高くなく一般的な性能と厚さのものです。
気を付けたのは開口の大きさです。
窓の断熱性能はトリプルガラス、2重サッシでも外壁、屋根、床の性能に比べて数倍低い為、開口を大きくとれば取るほど断熱性能は確実に下がります。
なので、開口を効果的かつ、有効に設置したことにより断熱性能は大きく上がりました。コスト的にも断熱材料に関してはほとんど上がっていません。(ただし、サッシは全てLow-eガラス)
プランニングと周辺環境を考慮し設計した結果であり、断熱性能とコスト&開口はトレードオフしたのではなく、むしろ開口を小さくすることによりコスト的に木製Low-eサッシが採用出来たなど、良い部分も増えてクライアントの希望に沿う設計が実現できたと自負しています。
しかしながら断熱計算とコスト管理はかなり時間を割いて検討しました・・・。
*断熱計算は詳細設定等を含めるとA4用紙80枚ほどの計算書となっています。
これからの時代、我々建築士の案件はデザインだけでなく、コスト管理や構造性能はもちろん、断熱性能も緻密に設計する時代となってきた、というのが実感です。
いつもの癖で話が冗長になり過ぎました。
住宅建築をお考えの方でもっと聞きたい方はお気軽にご連絡下さい。
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